『虎、電車、郵便局』の3つのキーワードを使った小説です。
A4用紙一枚程度の分量なのでサクッと読めますよ。
本文
ふと意識が覚醒した。
どうやら眠っていたようだ。今はどの駅まで来たのだろうか。
ぼーーっとする頭で電光表示を見上げた時、視界の端に違和感を感じた。
……?
虎がいる。
どっしりとした巨体の虎だ。
鋭い眼光は私に向けられており、ゆっくりとこちらに近づいてきていた。
……唐突の出来事に頭が上手く回らない。
それでも集中をしてこの状況の把握を試みる。
現在私がいるのは走る電車の中。
恐怖に縛られて虎から視線を外すことは出来ないが、どうやら周囲に人はいないらしい。
郵便局員が一年で一番忙しいといっても過言ではない、年末年始の忙しさに疲れ果てて帰りの電車で寝てしまっていたようだ。
ここまで考えていた間にも、虎との距離は縮まっている。
(あ、やばい)
そう思っても体が固まって動けない。
仮に走り出せたとしても足の速度で敵うはずもないだろう。
何故電車内に虎がいる。
何故他に誰も人がいない。
脂汗を流しながらそんなことを考えていると、虎が急に走り出した。
そして軽く跳躍して鋭い爪が生えた前足を繰り出し……。
気づくと私は真っ白な天井を見上げていた。
「痛っ!?」
顔を動かそうとすると頬に激痛が走った。
上半身が包帯でぐるぐる巻きにされている。
今いるのは真っ白なベッドの上で、腕から点滴のチューブが伸びていた。
ここはどうやら病院のようだ。
痛みに耐えながら寝ていた身体を何とか起こす。
(どの位寝ていたのだろうか)
テーブルに置かれていたテレビのリモコンに手を伸ばして電源を付けると、ニュース番組が流れていた。
『昨夜、電車内で虎が出没するという事件がありました。その場で駆除されましたが、どこからやって来たのか現在調査中とのことで……』
キャスターの男性がそのようなことを淡々と喋っていた。
何が何だか訳が分からい。
とその時、視界に異物を捉えた。
駆除されたってさっき言ってたよな。
駆除ってことは死んだってことだよな。
ではなんで……。
私の目の前に『虎』がいるのだ。


